93.BUSHIのマスクを被る(1)

ロードバイクに乗ることが切っ掛けで、「自分、大好き」とか「俺って、なんて格好いいのだろう」と、自己愛の塊になる瞬間を何度か経験した。

例えば、日々サイクリングを繰り返すことで、体重が落ち、肥満体が徐々に締まった体になると、俺は鏡の前で、肉が削げた顔まわりを確認し、そっとつぶやく。
「自分大好き」。
へこんだ腹を見て、「よく頑張った俺、ストイックな俺、大好き」などと、自画自賛する。

町中をサイクリングしている時も、お店のショーウインドウに映るロードと自分を見て、「俺、格好いい」とうっとりする。
この勘違いレベル、自分大好きレベルが狂ったほどに高まると、地面に映る、サドルにまたがった自分の影を見て、「俺、大好き」とうなりたくなる。

「そろそろ病院に行った方がいいかな?」と俺自身に対して思った時もあるが、「世の中には、自分大好きおじさんは一定数いる。特別珍しいものでもない。俺も別にええか」とも思う。
酒の席で、ちょくちょくいるのだ。
長者番付に名を連ねたわけでもなく、超有名企業の重要なポストで成果をあげているわけでもない。
そんな、どこにでもいるおっさんが、仕事とはなんぞや、人生とはなんぞやと、まるで神羅万象を知り尽くした口ぶりで語り、最後に「俺は頑張った。俺は結果を出した。俺ってすごい」と、自己顕示欲を炸裂させる。
聞いてる側からすると、人生の無駄でしかない。
「こうはなりなくないよなぁ。聞いてて、こっちが恥ずかしくなってくるよ」と、いつも俺は思うが、ロードに乗っている時の俺も似たようなものかも知れない。

ところが先日、ロードに乗っている時以外で、「俺ってかっこいい」の波が押し寄せてきた。
鏡の前で、新日本プロレスのBUSHI選手のマスクを被り、ポーズをとりながら、「俺って格好いい」。
正確には、俺ではなく、BUSHIが格好いいのだが。

新日本プロレスには、ボクシングほど細かい階級ではないが、100kg以上のヘビー級と100kg未満のジュニアヘビー級がある。
BUSHIは、ジュニアヘビー級でマスクマン。
その身軽さをいかしたファイトでお客さんを魅了する。
倒れた状態から、ブレイクダンスで立ち上がったり、コーナーから膝を立てて相手にぶちこむMX。
受けた選手が激しく跳びはね、観てて爽快感がやばい。

そして、BUSHIのもうひとつの魅力として、見た目の格好良さ。
とにかく素晴らしい。
見た目にかなりこだわっていると思う。
その最たるものが、マスク。
試合毎にマスクが異なるのだ。
ベースとなる形は何パターンかあり、時にはエヴァンゲリオン風、時にはキン肉マンに出てくるアトランティスをあしらったマスクで入場してきて、俺の魂を揺さぶりまくってくる。
「俺もBUSHIになりたい」。
BUSHIの魅力にとりつかれた俺は、そう念じた。

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